地下足袋山中考 NO24

<森吉山スキー場の変遷F 売却・廃止・無償譲渡へ>

バブル崩壊に伴う長い景気の低迷により、森吉山スキー場を運営するコクド(1992年に国土計画から社名変更)も経営改善の大転換期を迎えていた。200410月にはコクド代表取締役会長の堤義明氏が西部鉄道の有価証券報告書虚偽報告の責任を取る形で、会長及び西部ライオンズオーナーを辞任し一戦から身を引いた(2006.3に証券取引法違反容疑で逮捕、11月に有罪が確定)20051月には西部グループ経営改革委員会が中間報告を出し、ゴルフ場、スキー場、ホテルなど国内160施設のうち25%を売却・撤退の対象とすることを発表。20062月、コクドは新プリンスホテルに吸収合併され解散。西部グループは持株会社西部ホールディングスを設立し、西部鉄道、プリンスホテル及びこれら2社の子会社を統括しグループ再編を完了した▲200612月、森吉山両スキー場は経営改善計画によって、世界有数の総合金融グループである米シティーグループの投資会社シティーグループ・プリンスパル・インベストメンツ・ジャパンに売却が決まり、同社が全額出資するウインターガーデンリゾーツが夏場のゴンドラとスキー場を運営することになった。売却先が見つからなかった森吉スキー場と森吉ヒュッテは、20073月に廃止が決定し、2009年に解体が終了し緑化が終わった▲阿仁スキー場の運営を引き継いだリゾーツ社は、初年度2007年の運営が6千万円の赤字を理由に、2008年の夏場のゴンドラ運行の休止を伝えてきたのに対し、市は人件費400万円を支援。さらに、冬場のゴンドラ運行についても白紙で、市が運営するのであれば無償譲渡を打診してきたが、県と市で3500万円を財政支援することで冬場の営業が継続された。2009年度の運営についても市として継続を申し入れたが、リゾーツ社は親会社の方針で休止するとしたため、市は地元NPO法人「冒険の鍵クーン」に運営の引き受けを打診し、同社から施設を借り受ける形で7月から運営を開始。2010(H22)年度の冬場の運営は市内のNPO法人「森吉山」が引き継ぎ、1211日から327日まで営業することになった。今年10月上旬、リゾーツ社と親会社の関係者が来庁した。「スキー場運営から撤退しリゾーツ社を清算し、年度内をめどに同社が保有する施設を市に無償譲渡したい。譲渡先が見つからない場合は、現状回復し国有林は返すことになる」との本社米シティーグループの意向を伝えた。市は、阿仁スキー場のゴンドラ運行は、市の観光振興に欠かせないとして、財政支援してきた経緯もあるが、以前、市が試算した収支予測によると、年間の赤字は約1800万円に上る。しかも、H23年にはゴンドラのロープ交換で4500万円、H25年には第一リフトロープ交換で1000万円が見込まれるとした。津谷市長は固定費として掛り増しになるとしながらも、今年1111日に開催した市議会議員全員協議会で「阿仁スキー場の廃止は、地域経済が停滞する懸念が大きい」とし、スキー場無償譲渡の受け入れを表明。議員からは撤退会社の応分の負担を求める意見はでたが、異論はほとんどでなかった(11.512さきがけ、秋北、北麓新聞抜粋)1987(S62)12月のオープンから23年の時を経て、民間活力を唱えた国策リゾート開発は行き詰まり、生き残った阿仁スキー場は、市営化に動き出した。しかし、過疎化の進行と団塊ジュニア層が激減した今日、ローカルスキー場の健全経営は前途多難である。新たな運営主体となるNPO法人「森吉山」も、当初から赤字補てんを前提としている。予想される年間1千万円余りの赤字補てんは、当面は市の社会体育施設の運営費としてとらえることになりそうだ。(2010.11.21)<次号につづく>